散りゆくさくら

東寺の桜1

虚構の世界が崩壊していく作今、崩れゆく世界を見つめながら今生きる花に安堵する

引用
「雪とのみふるだにあるをさくら花いかにちれとか花のふくらむ」や「春さめのふるは涙かさくら花ちるををしまぬ人しなければ」の2つからは、桜が散るのは桜の意志ではなく、桜を取り巻く環境によって散らざるを得ないのだ、と受け取った様を伺える。それを逆説的だが直接示すのが「春風は花のあたりをよぎてふけ心づからやうつろふとみむ」であろう。つまり、桜が自ずから散るのではなく、風や雨によって散ることが不可避であるところに、桜が散る美しさをより一層感じるのである。
儚さと同居する美しさに意志は必要ない。そして、その意志のなさは咲く桜の生命力と対照的である。だからこそ、あんなにも咲こうとする桜の意志にも反して、風や雨によって散らされる桜のことを愛おしく思い、その儚さに美しさを感じることができるのだろう。

辰の年・辰の月・辰の日